体験談:ハワイ大学での海外臨床実習留学を終えて
ハワイ大学での海外臨床実習を終えて
和歌山県立医科大学 6回生 石井宏樹
この度は、選択臨床実習の一環として2023年4月3日から4月28日の4週間、ハワイ大学での海外臨床実習に参加させていただきました。最初の1週間はFamily medicineの臨床教授である渡慶次先生のクリニックで、その後の3週間はKuakini Medical Center(KMC)にて研修させていただきました。
私は入学当初より海外での研修に興味を持っており、ぜひ6年次の臨床実習に応募したいと考えていましたが、COVID-19の影響によりここ数年海外臨床実習が停止していたため今年もまだ行けないのかなと気がかりでした。そのような中、幸いなことに今年度より再開することとなり、研修の機会をいただきました。ワクワクすると同時に、弊学からハワイ大学への派遣が数年ぶりということから事前情報もあまりなく、実習がどれくらい大変なのか、1人で1ヶ月も海外で過ごしていけるのかととても不安に感じたことを覚えています。
4/3-4/8@Dr. Tokeshi’s office
渡慶次先生の下での実習は渡慶次道場と呼ばれ、以前は早朝から実習が始まりかなりハードだと伺っていました。しかし、コロナ禍を経てクリニック自体が午前中のみ+24時間オンコール対応という形に変わっていました。
クリニックでの実習は7時半までにNursing homeにいる担当患者さんのバイタルを取り、渡慶次先生に報告することから始まりました。その後、クリニックの来られた患者さんの問診をとり、渡慶次先生の外来を見学させていただきました。先生は診察や採血など、一つ一つの所作における「型」を大切にされており、短い時間ながらもこれらをできる限り吸収することを目標に日々実習に励みました。また、常に患者さんを第一に考え、尽くす心を持つことと医師としてのプライドを持つこと、一見相反するように見えるこれらの事柄がいずれも大切であることも教えていただきました。私たちは患者さんに医療を施すと同時に、多くのことを教えていただいている立場にあり常に謙虚でなければならない。一方で、医学のプロである以上は十分な知識、技術、精神を持ち合わせていること。これらのことを忘れることなく生涯医師人生に尽くしていきたいと思います。医学以外にも歴史や政治、国際情勢などのお話も伺い、見聞を広げ自分の意見をしっかり持たなければいけないことも実感しました。あっという間の1週間でしたが、渡慶次先生に出会えたこと、そして上記の事柄を学べたことは私にとってかけがえのない経験となりました。
4/10-4/28@Kuakini Medical Center
KMCでは一般内科でお世話になりました。1年目レジデント、2年目レジデントで構成されたチームが4つあり、そのうちの一つに参加させていただきました。私のチームは1年目、2年目いずれもフィリピンからのIMG(International Medical Graduate; アメリカ以外の国で医学部卒)であり、他チームにはAMG(American Medical Graduate; アメリカの医学部卒)はもちろんインドやベトナム、ヨルダンなど様々な国出身の先生がおられ大変国際色豊かなところでした。
実習は朝6時に担当患者さんのカルテをチェックし、昨晩の出来事を確認するところから始まります。その後1年目レジデントと共に回診へ行き、自分の患者さんについて情報をまとめ、その日のプランを考えます。8時ごろにチーム全員で集合し、2年目レジデントに自分の患者さんについてのプレゼンをした後プランの修正などを行いました。10時ごろには全チームが参加するICUの回診があり、それが終わると指導医へのプレゼン、各処置の見学などを行いました。また、4日に一度オンコールがあり、この日は日中ERに来た患者さんの新規入院を担当しました。さらにはセミナーや論文紹介、症例検討会などが適宜行われておりとにかく盛りだくさんな日々でした。
初めは全てが英語で行われ、医学単語や略語もわからないことだらけでついていくことに必死でした。自分の担当患者さんに対し、Review of systemsに従い患者さんを診て患者さんの状態を把握し、ガイドラインやUp To Dateなどを用いてプランを考える。そしてこれらのことを論理的にプレゼンする。どれも満足にできない中チームの先生方が熱心に、そしてとても親切に一つ一つ教えてくださったおかげで着実に成長することができました。最後のプレゼン機会でこれまでで1番のプレゼンができた時は、先生も自分のことのように喜んでくれて本当に嬉しかったです。
ハワイでの臨床実習では上記の事柄に加えアメリカの医学教育、現地の文化など多くのことを学ぶことができたとてもても濃い4週間となりました。そして何よりも、ハワイで出会えた先生方と仲間が私にとって何よりも大きな財産です。今回の留学で得た経験を糧に今後一層精進してまいります。
最後になりましたが、このような機会を与えてくださった国際交流センターの皆様、ご指導してくださった先生方に心より感謝申し上げます。