体験談:コンケン大学留学体験記
コンケン大学臨床実習留学体験記
林茉里
私は2023年4月3日から4週間に渡って、タイのコンケン大学消化器外科で選択臨床実習を行いました。私は将来、故郷である和歌山県で医療に従事したいと考えているため、学生のうちに様々な経験をし、視野を広げることを意識してきました。今回の留学もその助けになるのではないかと思い、決意しました。留学先に特にこだわりはありませんでしたが、コンケン大学は自大学との交流が深いことや日本からのアクセスがいいことから今回の留学先として希望しました。
私はコンケン大学の最大の関連病院であるシーナカリン病院の消化器外科で実習をさせていただきました。自大学附属病院では定められた曜日だけ手術が行われていますが、シーナカリン病院では旧病棟と新病棟の入れ替わりで平日は連日手術を行っており、毎日手術見学をすることができました。そのため、多くの症例から学ぶことができました。コンケンが位置するタイ北東部では生魚を食べる習慣があり、その生魚に寄生する吸虫によって引き起こされる肝内胆管癌の症例がほとんどでした。この癌に対する肝切除は6時間を超える開腹手術ばかりでしたが、執刀医の先生が英語で解剖の説明を加えてくださり、解剖学と医療英語を繰り返し学ぶことができました。また、ガウンを着て手術に参加したいという申し出を快諾してくださり、何度か実際に手術に参加する機会を得ることができました。腹腔鏡ポートの挿入や縫合といった、日本の臨床実習ではできないことをさせていただけたことは、本当に貴重な経験になりました。手術以外にも外来を見学したり、学生に混じって講義に参加した日もありました。外来中、患者とのやりとりはもちろんタイ語で行われていましたが、カルテはその場で英語で打ち込まれており、医師の英語力には本当に驚かされました。また、参加した講義はタイ語で行われていましたが、スライドはすべて英語で書かれており、講義後の質問も英語で行われていたりと、学生が医学を英語で学んでいるところを目の当たりにしたことは自分にとってとてもいい刺激になりました。
コンケンの中心部(大学から車で約10分)には大型ショッピングモールがある他、大学付近は飲食店やホテルが連なっており夜遅くまで賑わっていました。一方で、自然豊かでのどかな風景が広がっている場所もあり、どこか和歌山と似た雰囲気を持つ地域であると個人的に思いました。休みの日には、コンケン大学の国際交流センターの方々がさまざまなところに連れて行ってくださり、寺院を巡ったり鉱山やダムを訪れたり、またリバーカヤックをしたりと、学生だけではなかなか体験できないことをたくさんさせていただきました。食事に関しては、病院内の食堂がとても充実しており、毎食200円以内でお腹いっぱい食べることができました。また、今回の留学を通して友達になったコンケン大学の学生や外科の先生方が夕食に連れて行ってくださり、現地人ならではのレストランで美味しいタイ料理を堪能することができました。タイでは4月に旧正月の大連休があるため、その期間を使ってバンコク旅行を満喫しました。
留学準備をする中で自分はこの留学で何か得られるのだろうかと何度も不安になることがありましたが、タイでの日々は本当に充実しており、医学以外でも学ぶことが多くありました。特に、多くのレジデント(日本における後期研修医)の女性医師が外科医として早い段階から執刀を担当し、活躍している姿を目の当たりにしたことは、女性医師や若手医師が活躍する場の少ない日本の医療の実情について考えるきっかけになりましたし、自分の将来の可能性を先入観で狭めてはいけないと強く思い直すきっかけにもなりました。私がこれほどまでに充実した留学生活を送れたのは、たくさんの方々のサポートがあったからです。一緒にコンケン大に留学した3人をはじめ、同時期に藤田医科大から留学していた3人、コンケン大の友人、シーナカリン病院消化器外科の先生方、和歌山県立医大およびコンケン大国際交流センターの方々、家族、他関わっていただいたすべての方に感謝申し上げます。ありがとうございました。