小児糖尿病キャンプ研修2019
氏名 稲垣 真実子
日程
2019年7月26日(金)~8月6日(火)
キャンプ参加は7月28日(日)~8月4日(日): 7月28日から男児を対象にしたジョスリンキャンプに滞在した。8月2日の朝に女児を対象としたクララバートンキャンプに移動し、8月4日にキャンプ場を出発して、空港に向かった。8月1日の午前には病院も見学した。
1.糖尿病の治療について
アメリカでは、食べるものや量に合わせてインスリン量を調節するカーボカウントという治療法が一般的であった。カーボとは炭水化物のことである。カーボカウントでは、1単位の超速攻型インスリンで低下する血糖値を表す補正インスリン(Corrections)と1カーボの炭水化物に対して必要な超速攻型インスリンを表す効果値(Carb)を用いて必要なインスリン量の計算を行う。まず、子どもの現在の血糖値から目標血糖値を引き、+もしくは-になった値を補正インスリンで割る。次に食事に含まれているカーボ数を計算し効果値で割る。こうして得られた2つの数字を足したものが食事前に投与する超速攻型インスリン量である。カーボカウントを行うことで、子どもたちそれぞれの食べる量や好みに合わせることができていると感じた。 キャンプでは朝?昼?夕食だけではなく、14時40分と21時にスナックタイムが設定されていた。そのため、血糖値測定は朝?昼?夕食前3回とスナックタイム前2回、そして深夜の0時、3時の計7回行われるが、0時に血糖値の異常がみられなければ、3時は測定せず、6回であった。食前に血糖値を計測することは知っていたが、深夜にも計測することは知らなかったため、非常に驚いた。一度だけ深夜の血糖値測定に同行したが、何名かは低血糖、もしくは高血糖になっており、就寝直前の運動が就寝中の血糖に大きく影響することがわかった。就寝中に高血糖によるケトアシドーシスや低血糖による意識障害などをおこす可能性があるということを知り、糖尿病の怖さを学んだ。カーボカウントや深夜の血糖値測定は、自宅では親の役目になるため、1型糖尿病の治療では親の理解や協力が不可欠であり、家族を含めた看護が必要であると感じた。 アメリカでは、注射ではなくインスリンポンプの使用が一般的である。インスリンポンプは3日に1回の交換が必要であり、多くの子どもは自分で交換していた。また、子どもたちの多くは持続血糖測定器も体に装着しており、自分の血糖値を食事前だけでなく常に管理していた。子どもの血糖値は年齢が小さいほどそのコントロールが難しい。キャンプ中、食後の運動で低血糖になったり、食前の血糖値測定で高血糖になったりする子どもが思っていた以上に多く、とても驚いた。子どもの変動しやすい血糖値をなるべくコントロールするために、持続血糖測定器はとても重要だと感じた。
2. キャンプについて
キャンプの運営に携わる人たちは、スタッフとHCT(health care team)で構成されていた。HCTは栄養士や看護師、看護学生などさまざまな人たちで、血糖値測定やインスリン量の計算など、子どもたちの健康を守る活動をしていた。スタッフもさまざまな職種の人たちであるが、多くは1型糖尿病患者でキャンプ出身者であった。1型糖尿病患者はあまり多くないので、これまで1型糖尿病を抱える人と実際に会ったことがなかった。子どもたちは普段、周りに自分と同じ病気を持つ人がいない中で生活しているので、同じ病気を抱えた多くの子どもたちと会えて、友達になれる大切な機会だと思った。また、スタッフの多くも糖尿病を抱えているため、自分よりも長い間病気とともに生きている先輩たちの話を聞けることは、とても良いことだと感じた。
3. 病気の受け入れについて
子どもたちに病気のことを聞くのは、とても勇気のいることだった。嫌な思いをしないだろうかと恐る恐る聞いてみたところ、全員が気持ちよく答えてくれた。「話すことは嫌ではないか?」と聞いてみたところ「大丈夫だよ。」と返され、糖尿病を自分の一部だと受け入れて、前向きに生活している様子が感じられた。 話を聞いた中で一番印象に残ったことは「病気のことを知ってほしい!」という言葉であった。話を聞いた子どもは、周りに1型糖尿病の子どもはいないと言っており、病気のことを理解してくれる友達が近くにいない状況だった。そのため、学校生活を送る中で高血糖や低血糖で体調不良になったときに大変だと言っていた。だからこそ、自分たちが抱える糖尿病という病気のことをもっと知ってほしいという気持ちがあるのだと感じた。私は子どもたちが孤独感を感じやすい環境にいることを実感し、糖尿病の正しい知識を一人でも多くの人が身につける必要があると感じた。
4.病院見学について
一番印象的だったのは、フロア全体が糖尿病のためになっていたことだ。患者は1型、2型ともに同じフロアで診察を受け、合併症の治療も同じフロアで受けることができた。
看護師であり、現在は患者の教育担当という立場で働いているエミリーさんにお話を伺うことができた。彼女のような教育担当者が患者の生活を援助するとともに、行動精神科の医師が患者の精神面を積極的にケアすることになっていた。糖尿病教室などは、日本と同じように開催されていたが、日本よりも教育担当者や精神行動科の医師といったような患者一人一人を身近に支える医療従事者が多いように感じた。
5. 感想
慣れない英語での会話でうまく聞き取れないことや話せないこともあったが、子どもたちやスタッフの人たちが辛抱強く話を聞いてくれて、伝えようとすることの大切さを感じた。実際に見て、一緒に生活することで、糖尿病を抱えながら生活する大変さや辛さをしっかりと学ぶことができた。 看護学生としてさまざまな疾病について学んでいるが、キャンプに参加し強く感じたことは、学んだ気にならない、知った気にならないことの大切さである。病気とともに生きるということは、病気の症状や治療などにより、生活に多くの支障をきたす。それを乗り越える強さを子どもたちが持っていると感じたのも確かだが、それ以上に患者の目線に立って、患者の生活を考えることの重要さを感じた。
6.謝辞
この機会を与えてくださり、渡航準備から、帰国に至るまでのさまざまことを援助してくださった先生方、事務の方々、大学に本当に感謝しています。このキャンプで学んだことをこれからの実習での看護に活かしていきたいと思っています。 4日(日):7月28日から男児を対象にしたジョスリンキャンプに滞在した。8月2日の朝に女児を対象としたクララバートンキャンプに移動し、8月4日にキャンプ場を出発して、空港に向かった。8月1日の午前には病院も見学した。